ビブリオゲームズBlog

自作ボードゲームや遊んだボードゲームのことを書いていきます

ゲムマ2015春プレイ済みゲームピックアップ

 2015春のゲームマーケットが近づいてきましたね。うちのサークルは今回も不参加です。いくつかプレイしたのでその中から面白かったものを紹介します。

 

あてっこついたて(B28)

 一言でいえば20の質問をみんなでやるゲーム。白いもの、きるもの(着るなのか切るなのかは解釈自由)などの共通のテーマと『Yes、Noで答えられる質問』をヒントに自分に配られたお題(他のプレーヤーが書いたもの)が何かを当てるパーティーゲーム。基になった20の質問以上に考えうる選択肢の中から正解を絞り込んでいくのが楽しい。プレイ人数が4~8と広いのも〇

 

 ルール的にはほぼ20の質問なのだけれど、プレイ感的には十分に違う.

 違いの一つは程よくプレーヤー間の絡みがある事。例えば、お題が「うつるもの(漢字の解釈は自由)」の時に一人目の質問が「それは物質ですか」だったとする。その人はなぜそんな質問をしたのだろう? 『季節』とか『時代』といったお題が他のプレーヤーに配られているのが見えているのかもしれない。 もっというならその人が書いたお題がそういうものなのかもしれない。 そんなことを考えながらプレイしてみるとより一層楽しめるようになっている。

 

 時間を見つけて他のゲームに関しても追記します

ゲームを作って思ったこと ランダムサプライの弱点

 『ランダムサプライを採用すると確実に楽しさがアップする』。ゲーム開発当初の私はそう考えていた。なので、一作目のクロノスレコードが一人当たり9枚のカードだけを使う事になった時、喜んでランダムサプライの導入を決めた。

 

 しかし、実際に拡張を作り始めるとすぐ、ランダムサプライも決して万能のものではないと気づかされた。ランダムサプライはモジュラと呼ばれるコンボとの相性がよい反面、リニアとよばれるコンボと相性が非常に悪いという弱点を持っているように感じた。

 

<ここから一旦用語の説明>

 ここでいうモジュラーとは、カードテキストに組み合わせるべきカードが明らかに示されていないコンボ(ドミニオンでいえば『鉱山』の効果でゲーム終盤に『ハーレム』をデッキに加える等)の事。ランダムサプライを使う事でコンボに気づく楽しさや特定のカードの有無によっカードの評価に変化が出てゲームごとに違う体験ができるのでプラスに働く。

 

 リニアはその逆で、カードテキストに相性のいいカードが明らかに書かれているコンボの事。例えば、ドミニオンにランダムサプライを採用しなければ『+2アクションがついたアクションカードX枚につき勝利点Y点』という勝利点カードを作ることが可能だろう。しかしランダムサプライを採用する場合、このようなカードを作ってしまうと調度いいバランスにするのが難しくなってしまう。(村系が1枚もない場では何もしないカードになってしまうし、村系が多い場では非常に強力になってしまう。もちろん3点+村の数X枚につきY点というのは可能だが、この場合、ランダムサプライなしでに比べてあまりゲームの雰囲気を変えないカードになりがちである。)

 

<用語説明終わり>

 

 悩んだ結果、私はリニアを気を使いながら残す方向をとった。相性の悪さを感じながらも残したのはリニアとモジュラーは遊びの種類が違い、故に受け入れられる層が違うからだ。(詳しくはIwasgameさんの翻訳記事を参照)前者はゲームに体験を求めるプレーヤー(ティミー)に好まれ、後者はゲームに創造を求めるプレーヤー(ジョニー)に好まれる。クロノスレコードという作品が『バインダーをめくって状況を把握しながら考える』、『立体的な思考』といったほかのゲームにない体験を一つの売りにしていたため体験を重視するプレーヤーからより評価されていた。彼らから評価の高かったカードを他のカードとのバランス調整が難しくなることを感じながらも残すことにした。また、相性の良いモジュラも『立体的な思考』という体験の部分に多様性を持たせるようなものにした。

 

 ランダムサプライは思っているほど魔法のようなものではなかった。一回一回のゲームをうまく違うものにできるだけの体験の空間を作り、そこに一個一個他のカードを気にしながら作っていく事で初めて本当の意味で機能するという事を感じた。

 

余談

 ドミニオンの場合、コンボというよりは連鎖という感覚(+アクションの事です)でカードとカードの関係を作っているのが非常にうまい。連鎖を起こす村系のカードはいろいろなカードと組み合わせられるので基本的にモジュラーであり、ジョニーに対するアピールはOK。さらに、連鎖は〇連鎖と数字で表せる点がティミーを引き付けるキーワードMoreにひっかかるためティミー受けもいい的な感じになっていると思う。(もちろん戦術の幅、例えばデッキ圧縮という体験に対して、逆の庭園戦略を実装してるところとか も大きい)

 連鎖の楽しみが強いマンカラあたりをベースにランダムサプライ付きのゲームを作ろうかなぁ

 

P.S.

 久しぶりにblog書いてみたけどやっぱ俺文体が固いなぁ。

Making magic翻訳記事 10の心理的障壁その1

 今回の記事は2008年に掲載されたDesign seminar : The 10 mental locksを英語の勉強がてら意訳したものです。かなり久しぶりに英語の記事を読んだため思った以上に時間がかかってしまっています。

 冒頭の文章は省略し、10個の心理的障壁に関する部分だけを少しずつ翻訳(意訳)していきます。

 

1 誰かはそれを好きにならない

 最初の落とし穴はデザイン時に感じる「カードをより魅力的なものにしなくては」という物だ。たいていは作者が当初のターゲット以外の人たち向けの改善方法に気が付いた時に起こる。この思考プロセスは「少しの犠牲でこのカードの一般的な魅力を増加させられるのでは?」という物だ

 

 この考えには問題がある。多くの場合、これらの「小さな犠牲」がこのカードの元来のターゲットであった人達にとっての魅力を薄くしてしまう。もちろん、そのカードを好きになりうる人を増やす事にはつながるかもしれない。でもそれ以上にそのカードを心から気に入ってくれる人を減らしてしまうのだ。デザイナーの仕事というのは全てのカードを全ての人が好きになるように作る事ではなく、全ての人に何枚かのお気に入りを作る事なのだ。マジックには無数のカードがあるが全てのカードは全てのプレーヤーを幸福にするわけではない。

 

 デザイナーにとって本当のゴールはそれぞれのカードを意図したとおりの魅力を持った状態である。あるカードが一部のプレーヤーを幸せにしなくても(たとえ、不幸にしたとしても)他のカードがそれを補ってくれるから心配しなくてもいい。カードの価値はターゲットにした人にこそ決めてもらうべきものだ。彼らを幸せにすることが出来たならそのカードはもうしっかりと役目を果たしているのだ。

 

 勘違いが出ないよう追記をしておく。私はカードの魅力を広げるデザインが出来ないとは言っていない。ただ、それは当初のデザインどおりに完成してはいない。

クロノスレコードのカードの知られざる歴史 その1

 I was Gameさん(ヴォーパルス、ダンジョンオブマンダムなどのサークル)の翻訳記事の一つ『ドミニオン』のカードの知られざる歴史が好きで何度も読ませていただいています。

 

 どこまで有用かはわかりませんが自分の場合はどう考えたかを書き留めておくことにしました。今回は騎士、貴族、道化師、契約の悪魔の4枚です

騎士

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 最も基本な能力なしのカード. 非常に珍しいルールを採用しているクロノスレコードに置いて『安心して気楽に出せる』、『他のカードの強さの基準』となるという役割を果たしている。

 

 開発開始当初は『能力が強い代わりに点数が低いキャラクターとの差別化』という理由で勝利点3だった。しかし、『計算をスムーズにする』、『本当に褒めるべき時にだけ獲得点数を2ケタにしてテンションをあげる』という理由で勝利点2へ変更されている。

 

 名前として騎士を選んだのは、①イラストとしての差別化が容易だと考えたため。②名前をKで統一しようとしていたころの名残。(例えば、白魔術師は強化魔導士という名前だった)

貴族 

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 立体エリアマジョリティーは、配置したエリア以外の票数を増やすことが出来る。これは楽しさの核でもあるが、他のプレーヤーの意思(狙っているエリア)が伝わりにくい部分がある。そこを補強し、序盤からエリアマジョリティーを意識した潰しあいを煽る事が目的の一枚。イラストも確か『むかつくヒゲ』という注文をした記憶がある。

 

 作者はかなり信頼しているため、長らく3枚入れる予定だったが、『あまり枚数が多いと一つのシートに固めて打つだけの人が増える⇒透けない』という指摘を受け2枚に。

 

 また、文章が2重否定になってしまいわかりにくくなってしまっているのは反省点。ようは『単独一位の時+2点』。最後まで調整しようとしたのが仇になった。エンバグ怖い。

 

道化師

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 先手不利解消その1。最初のゲームでは最も新参者のカード。元々は『スタートプレーヤーを奪う』という効果で名前は海賊だった。

 騎士と同じ勝利点2になっているのは(最終ターンまで残すのではなく)早いタイミングで出すことを選択肢に入れてもらえるようにという意図。バッティング無効も同様の意図である。

 

 契約の悪魔

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 コンボ要員&アクセント。潰された方がいいカードの存在はゲームに大きな変化を与える。好む人も多かったので、数値が-3から-2へと変化した以外は最初から全く変更なし。

 

 相手の色を使うというルールの方は元々『勝利点-2 このカードで失点した時、青のプレーヤーはその半分を手に入れる。このカードで得点した時、青のプレーヤーはその半分を失う』という効果の『工作員』というカードだった。少ないカード枚数でできる限りの変化を出すために、1枚のカードにまとめる事になった

 

クロノスレコード2人用バリアント

 年が変わってしまいましたが、クロノスレコードの2人用ルールを公開します。

 

<準備>

 1.2人のプレーヤーは使う色を選びます

 2.ファイルにに9ポケットシートを2枚入れます。

 3.下のページの左下と右上に【騎士】のカードを入れます

 4.各プレーヤーは秘密裏に使うカード7枚を選びます。この時、同じ名前のカードを2枚選ぶことはできません。

 

<ターンの流れ>

 2人用ゲームは6ターンで行われます。

 基本的に通常ゲームと同じですが、ダイスの目が1,2,3の時は下のシート、4,5,6の時は上のシートを計算します。

 

<ボーナス計算>

 ゲーム終了時のボーナス計算(エリアマジョリティー)も少しだけ変更があります。

 下のページで勝つと6点、上のページで勝つと9点を得ます。同数の場合、誰にも点数が入りません。

 

 

答えが明確すぎてつまらないゲームを面白くする9つの方法

1.面白くないゲームにも面白さは眠っている(前置き)

 極端な例として2×2マスの○×ゲームを思い浮かべてみよう。これはゲームだろうか? おそらく、ゲームではなく、先手が(必死に負けようとしても)勝つただの作業になってしまっているだろう

 

 ここまでひどくはなくとも、作ったゲームが『何をやればいいかが明確すぎる。面白くない』と言われてしまう事はある。ここで難しいのは面白くないゲームが面白くなる見込みがないとは限らないというところだ。

 

 例えば、上の○×ゲームを複雑にした五目並べやその発展形である連珠は十分に面白い。これは、縦横斜めいずれかにXマス並べたら勝ちというルールが ①非常に理解しやすい、②実力差が出るテクニック(先読み、相手を止めつつ自分の手を進める手を考える等)がある、勝者が決まった時に誰が見てもそれがわかる 等の点で非常に良いからだ。

 

 そう、上の2マス○×はゲームではないにせよ、ゲームとしてのポテンシャルは持っているのだ。同じように作ってしまった『明確すぎて面白くないゲーム』にも実は面白さのポテンシャルが眠っているのかもしれない。残念なことにもちろん無いかもしれない。

 

 前置きが長くなってしまったが今日の記事は『眠っている気がする』と思った時ように『ゲームをわからなくする方法』の大枠をまとめたものである。

 

2.ゲームをわからなくする9つの方法

鎌倉想像工房 |ゲームをつくるとは最適解の消失である

 2年も前の記事ですが『ゲームにはわからないが必要である』という事を書いた良い記事。

 この記事でいうところの最適解を無くす方法(僕の言葉でいえば導入すべき『わからない』)は大きく分類すると以下の9個しかない。

  1. だからわからない (ダイス、山札等の乱数発生器)
  2. 他人の思考なんてわからない(格ゲー等の読みあい、嘘等)
  3. 情報不足でわからない(非公開情報)
  4. 記憶しきれないのでわからない
  5. 知識不足でわからない(クイズ、定石)
  6. 複雑すぎてわかるに至らない
  7. 時間がないためわかるに至らない
  8. 動作が精密である事が要求されるため、うまくかない
  9. 番外(ゲームは分かるが続きのストーリーがわからない)

 

  単純に言えば、これらの要素を適切に取捨選択する事が重要だといえる。○×ゲームの亜種として製品になっているものでいえば、②相手路線で相手の置く場所を予測すれば妨害できるもの⑥複雑路線でルールを追加し、盤面を大きくしたもの、⑧動作路線で輪投げと合体させたもの等がある。もちろん、作るゲームのターゲットやプレイ感、基盤となるシステムとの相性を考えて何を加えるのか、どう加えるかを考える必要がある。

 

 もちろんいきなりは難しい。僕の場合は、自分の使おうとしているゲームシステム(≒ジャンル)がどのわからないを基礎としているかを把握する事から始めた。

 アナログゲームのジャンルでいえば、

  • ダイスは①運
  • ブラフやバッティングは②他人
  • ワーカープレイスメントは②他人⑥複雑
  • 記憶ゲーは④記憶
  • 人狼系は③情報②他人、状況により⑦時間
  • ハグルは③情報⑦時間、作者により⑥複雑、参加者により②他人(嘘等)

 を含んでいる。 デジタルゲームでいうならアクションは⑧操作をベースに⑦時間、他の娯楽でいえば早押しクイズは⑤知識⑦時間あたり。

 ゲームをわからないという観点から分解してみていきましょう。『ボーナンザの順番固定の手札はぷよぷよの予告スペース(ネクネク)に③情報のわからないを追加したものだ。山札の亜種としてこのゲームに使ってみよう』とか『ファウナというゲームはルーレットの①運を⑤知識に置き換えたゲームだ。他のギャンブルゲームにもクイズ要素を入れられないか』とか考えながら楽しく遊んでいればいいんじゃないかなぁと

 

 あとがき&次回予告

 『全くもってわからない』のも何をしても報われないという意味で作業となります。調度いい塩梅が大事って事ですね。

 ダイスゲーで『運すぎてわからない』場合は、振り直し等で予測しやすくする。 エリアマジョリティーで『相手がどこに行くかわかりにくすぎる時』はエリアごとに点数差をつける事で思惑を予測しやすくする等、9つのわからなすぎるを抜かずにマイルドにする手法はいくつかあるようです。

 

 考えがまとまり次第記事にします。

GM2014秋作品レビューその1 パイレーツコード(かぼへる)

サークル:かぼへる

筆者プレイ状況:4回(基本のみ) 3人プレイ

 

 カード14枚(4人プレイは18枚)を使った記憶型の推理ゲーム。誰にも配られていない2枚のカードを当てるのが勝利条件。

 

 記憶型の推理ゲームには通常、『予測して外した』というルール上脱落と『うっかり情報を忘れてしまった』という勝敗上の脱落があり、それを理由に嫌っている人も多い。正直、僕もその一人である。しかし、パイレーツコードはその心配がない。『予測した2枚のカードを持っているかを順に言っていく(外してもペナルティーなし)』というルールが前者を完全に消し、(人の予測等から少しは予想できるため)後者を程よく緩和してくれている。

 

 最後まで『自分のターンが回ってくればワンチャンスはある』という積極的な気分でプレイできる良いゲームだった。そして、その後、『くっそ、もう一回だ』と2ゲーム目を始めた。

 

 2ゲーム目を始めてこのゲームのリプレイ性の高さを感じた。このゲームのカードに割り振られた5種類の効果は、ゲームの多様性を生むだけでなく、推理の要素にもなっている。(あれ、何で誰もあの効果を使ってこないんだ?⇒埋まってんじゃね?的な)1度目は数字や効果を覚えるのに必死で皆、てんやわんやしていたが、最後の4回目にはブラフをかます人まで出てきた。拡張やプロモカードを入れてのプレイはまだできていないが、今から楽しみ。

 

 ゲームシステムの話ばかりしてきたが、かわいいドット絵も魅力的。取説、サマリーも丁寧でボードゲーム初心者にも安心してお勧めできる。