ビブリオゲームズBlog

自作ボードゲームや遊んだボードゲームのことを書いていきます

ゲームを作って思ったこと ランダムサプライの弱点

 『ランダムサプライを採用すると確実に楽しさがアップする』。ゲーム開発当初の私はそう考えていた。なので、一作目のクロノスレコードが一人当たり9枚のカードだけを使う事になった時、喜んでランダムサプライの導入を決めた。

 

 しかし、実際に拡張を作り始めるとすぐ、ランダムサプライも決して万能のものではないと気づかされた。ランダムサプライはモジュラと呼ばれるコンボとの相性がよい反面、リニアとよばれるコンボと相性が非常に悪いという弱点を持っているように感じた。

 

<ここから一旦用語の説明>

 ここでいうモジュラーとは、カードテキストに組み合わせるべきカードが明らかに示されていないコンボ(ドミニオンでいえば『鉱山』の効果でゲーム終盤に『ハーレム』をデッキに加える等)の事。ランダムサプライを使う事でコンボに気づく楽しさや特定のカードの有無によっカードの評価に変化が出てゲームごとに違う体験ができるのでプラスに働く。

 

 リニアはその逆で、カードテキストに相性のいいカードが明らかに書かれているコンボの事。例えば、ドミニオンにランダムサプライを採用しなければ『+2アクションがついたアクションカードX枚につき勝利点Y点』という勝利点カードを作ることが可能だろう。しかしランダムサプライを採用する場合、このようなカードを作ってしまうと調度いいバランスにするのが難しくなってしまう。(村系が1枚もない場では何もしないカードになってしまうし、村系が多い場では非常に強力になってしまう。もちろん3点+村の数X枚につきY点というのは可能だが、この場合、ランダムサプライなしでに比べてあまりゲームの雰囲気を変えないカードになりがちである。)

 

<用語説明終わり>

 

 悩んだ結果、私はリニアを気を使いながら残す方向をとった。相性の悪さを感じながらも残したのはリニアとモジュラーは遊びの種類が違い、故に受け入れられる層が違うからだ。(詳しくはIwasgameさんの翻訳記事を参照)前者はゲームに体験を求めるプレーヤー(ティミー)に好まれ、後者はゲームに創造を求めるプレーヤー(ジョニー)に好まれる。クロノスレコードという作品が『バインダーをめくって状況を把握しながら考える』、『立体的な思考』といったほかのゲームにない体験を一つの売りにしていたため体験を重視するプレーヤーからより評価されていた。彼らから評価の高かったカードを他のカードとのバランス調整が難しくなることを感じながらも残すことにした。また、相性の良いモジュラも『立体的な思考』という体験の部分に多様性を持たせるようなものにした。

 

 ランダムサプライは思っているほど魔法のようなものではなかった。一回一回のゲームをうまく違うものにできるだけの体験の空間を作り、そこに一個一個他のカードを気にしながら作っていく事で初めて本当の意味で機能するという事を感じた。

 

余談

 ドミニオンの場合、コンボというよりは連鎖という感覚(+アクションの事です)でカードとカードの関係を作っているのが非常にうまい。連鎖を起こす村系のカードはいろいろなカードと組み合わせられるので基本的にモジュラーであり、ジョニーに対するアピールはOK。さらに、連鎖は〇連鎖と数字で表せる点がティミーを引き付けるキーワードMoreにひっかかるためティミー受けもいい的な感じになっていると思う。(もちろん戦術の幅、例えばデッキ圧縮という体験に対して、逆の庭園戦略を実装してるところとか も大きい)

 連鎖の楽しみが強いマンカラあたりをベースにランダムサプライ付きのゲームを作ろうかなぁ

 

P.S.

 久しぶりにblog書いてみたけどやっぱ俺文体が固いなぁ。