『Cronos Record』のデザイナーズノート その1
今回の作品を作っていく中で、遊星からのフリーキックさんやスパ帝国さんの本にはお世話になりました.参考になるかはわかりませんがデザインをするうえで考えたことを書いていきます.
Chronos Recordがどんなゲームかはこちらをご覧ください
1.人とは違うものを
2012年春、作っていたドミニオンクローンを全て捨てました. 自分が惚れ込んだのはドミニオン自体ではなく、概要を聞かされた時のワクワク感(『ゲーム中に相手の様子を見ながらデッキを作る? なにその斬新なの、絶対面白いやん』)である事に気づいてしまったからです.
『何それ?面白そう』. 軽く説明するだけでそういわれるような斬新なゲームが作りたい.そんな気持ちで新作作りはスタートしました.
2.最後の一つ
『斬新なものが作りたい』とは『目の前に解くべき問題がないこと』自体が問題という厄介な状況です. 縛りがないのは逆にきついので『TCG関連から発想すること』というルールを設定していました.
その後、MTG、遊戯王、アルテイルなど色々なTCGを参考にデザインメモを何案も書いていきました.進展があったのはGWが終わるころ、『何かヒント書かれてないかな』と仲間とTCGを作っていたころのwikiを見ていたときでした. 僕がその斬新さに嫉妬した数多くのTCG. その中で唯一名前がメモに登場していなかったのが『金色のガッシュベル The Card Battle』と『ウズマジン』でした。
こうして『斬新なゲーム』という不明確な目標は『ファイルをうまくモチーフに絡めた上でコンポーネントとして使うTCGのようなボードゲーム』という具体的なお題に切り替わりました.
3.TCGとしてのスタート
差別化として思いついたのはファイルの中身の変更でした.ガッシュベルは1ページにつきカード1枚ですが、TCGの保存シートなら3×3の9枚を1ページに保存できます.
(↑こういうやつです)
3×3という配置は前衛、中衛、後衛という要素に当てはめやすく、TCGプレーヤーの好むバトルにしやすいと判断したからです.
第1案の方向性は以下のようなTCG+パズルものでした.
- ファイルは一人一冊. 自分のキングを含め全てのカードを配置しておく.
- 各ページに入れられるカードのコスト合計は決まっている.
- 毎ターン見えている相手に攻撃を仕掛け、倒せばファイルから抜く
- 一番上のシートに4枚以下のカードしか入っていない場合ページがめくられる
- 最終ページにあるキングをファイルから抜いたら勝ち.
- 同じシートに入れられるカードの制限がいくつかあり、それによってキングの位置を推測可能.
- 抜かれたカードの真下にトラップカードが入っていれば発動する
いくつか基本になりそうなカードを作り、上のルール6に当たる「制限」をどうすれば面白くなるかカードを抜いたり挿したりしながら試していました.
その結果、わかったことは『カードはどんどん入れていく方が面白い』という事でした. 『どのページにカードを挿すか』という問題は独特のジレンマを持っていたのです.(実際にプレイして、気づいていただきたいので詳細は伏せます)
お題は『いかにこのジレンマを楽しませるか?』に代わりました. 毎回同じものを使ったほうが調整しやすいと考え、新作はTCGからボードゲームへとジャンルを変えました.
ゲームマーケット2014春 『Chronos Record』ルール説明書公開
ドロマイワークショップから教わった7つのこと ~なぜたった4時間でなんだかんだゲームができるのか(その1)~
ドロッセルマイヤーズワークショップという『4時間でボードゲーム制作を体験する』イベントがあった. ボードゲームを題材にしたゲームデザインのワークショップはいくつかあるが、以下の点でかなり独特な会であったと思う.
- ゲームデザインについての講義は基本的に無い.
- グループや個人ではなく全体で一つのゲームを作る
- テーマが与えられ、そこからゲーム性を見つけ出すところから始める
- 発言はすべて挙手、決定はすべて参加者の多数決で行わえること.
これらは一見ゲーム作りのセオリーから大きく外れて見える.実際、主催者である渡辺店長も毎回『本来、ゲームは誰か一人の価値観で作った方がいい』とおっしゃっていた. しかし、実際参加してみると他のワークショップに比べ、面白いゲームや粗削りだがユニークなものができていた.今日、この記事で書きたいのは『実はゲームデザインのセオリーを守っていたのでは?』という事だ.
■□■コンセプト決定までのセオリー■□■
①全員を参加させるということ(今回はここまで)
②要素を洗い出してから核となるものを決める事
■□■プロトタイプまでのセオリー■□■
③ブレスト中は人の意見を否定せずのっかるという事.
④最低限の要素、数値から始める事
■□■テストプレイでのセオリー■□■
⑤一度のテストプレイで決めつけないこと
■□■改善のためのセオリー■□■
⑥ブレないよう『何が大事なのか』を書き留めておくこと
⑦問題点を意識し、それに合わせた改善案を出すこと
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ゲームマーケット春新作『Chronos Record』 カード紹介その1 騎士と貴族
6月1日に開催されるゲームマーケット春にて、Chronos Recordを頒布する予定です.
Chronos Recordは歴史改竄をモチーフにした立体陣取りゲームです.『TCG保存用のファイルにカードを挿していく』という特殊なシステムを『魔法で歴史(書)を改竄していく』という動きに見立てています.他のプレーヤーの動きも見ながら、できる限り自分のカードが多くのページから見えるように置いていくインタラクション強めの陣取りゲームです.
(参考 前の記事)
ただ、単に良い領地を得るだけではこのゲームに勝つことは難しいでしょう.勝つためには個性豊かなキャラクターカードの特性を理解し、よりよい順番でよりよい位置に出していく必要があります.
そこで、今日から4回に分けてカードの効果を実際のイラストとともに紹介していきます.第一回目の今日は騎士、貴族という2枚をカードの見方から説明していきます.
カードNo.1 騎士
上の絵が騎士という最も基本的なカードです.このカードを含め、大抵のカードには名前、見えたときに得られる勝利点、色、特殊能力という4つのパラメータがあります. このカードの場合、『騎士という名前』の『点数計算時に決められたページから見える事で、2点を青のプレーヤーに与える』、『特殊能力のないカード』という事を表しています.
派手な効果こそないですが、癖がなく使いやすいカードです. テストプレイでも初手使用率No1の無難な1手です.
カードNo.2 貴族
上のカードが貴族というカードです.騎士と違い『自分の色以上に多く見えている色がない時、勝利点2点を得る』という特殊能力を持っています.
『私は最終的にこのページのエリアマジョリティーを狙っていますよ』というメッセージを含んだ1手です.
この2枚が関わる小さな悩みどころを一つ紹介して今日の記事は終わりです.ぜひ考えてみてください.
Chronos Recordでは毎ターン1枚カードを挿していきます.
1ターン目スタートプレーヤー(赤)がファイルの1番下のページに『騎士』と『貴族』が1枚ずつ配置されています. この状態では(ファイルが透明なので)どのページからもこの2枚のカードが見えてしまっています. このままではどのページが得点計算の対象になっても両方のカードの点が赤のプレーヤーに入ってしまいます.
貴方がこのターンに入れられるのが騎士のカードだったとして、あなたはどこに配置しますか?
1.安定して2点を稼ぐ『騎士』のすぐ上に置き、上のページから見えなくする.
2.条件が揃えば3点を稼ぐ『貴族』のすぐ上に置き、上のページから見えなくする.
3. 1番下のシートに入れて貴族のボーナス条件を阻止
4. その他
尚、ページは4ページ 得点計算対象のページははサイコロの出目によって決まります.1⇒下から1番目 2⇒下から2番目 3⇒下から3番目 4,5⇒下から4番目 6振り直し
実際にプレイして試したい方は ゲームマーケット当日 試遊卓へお越しください
『基本根本 第一回』のアバウトな翻訳(旧Blogから転載)
今週はMTGの開発コラム『Makingmagic』にて年一回のコラム『基本根本』第五回『繰り返し』の日本語訳が公開されました.
閉鎖予定の旧ブログにて公開していた『基本根本 カードコード』の意訳をこちらのBlogに転載しておきます
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CronosRecordのデザイン
twitterにてカードの色の話が話題になったので、全てのカードを投稿します.
1.誰のカードか(赤、青、黄)
2.どれぐらい勝利点を得られるカードか(キャラクターの左に大きく書かれた数字)
という2点を重要だと考え、スペースを従来のゲームより大きく取ったカードデザインになっております.
<青>
<赤>
<黄色>