ビブリオゲームズBlog

自作ボードゲームや遊んだボードゲームのことを書いていきます

つまらなさに邪魔されないために

初めまして、BiblioGames 古瀬 和人と申します。 

この記事は「Board Game Design Advent Calendar 2018 22日目の記事となります。

 

何故”つまらなさ”の話をするのか?

  ”つまらない”。あぁ、なんてネガティブな言葉だろう。最も言われたくない、言いたくない言葉かもしれない。正直、クリスマス前に僕は何を書いているんだと。

 

 それでもまぁ、記事のテーマに選んだのは、ゲームを作る上でこの言葉とのいい距離感が大事だと感じるからだ。ゲーム作りのままならなさの一つはつまらなさと面白さは別パラメータだと思っている。面白さを突き詰めるだけでつまらなさが消えてくれることはないし、つまらなさを消していくだけで面白くなるわけじゃない。

 

 良いものを作ろうと思ったら、”面白さ”を信じる事と”つまらなさ”を疑う事を両方しなきゃいけない。魅力をきちんと理解してそれを阻む要素を消して行かなきゃならない。テストプレイで遭うネガティブな感想は(それが人から言われたのであれ、自分が感じてしまったのであれ)自分の信じた”面白さ”と敵対するものじゃ決してない。自分の信じた面白さが人に伝わるのを妨げるものを取り除くきっかけになってくれるものなんだと思う。

 

 そして、ゲームの魅力、目指す地点というのはそれぞれ違うが、避けた方がいい状態はある程度同じである。核となるアイディアと違い、消費することもあまりないし、1度身に着ければずっとついてくる。 初期プロトタイプを少しでも良い状態へ向かわせるためにどういうつまらなさとそれを回避するために考えられる方法を思いつく限り書き連ねてみました。あなたの信じた面白さが伝わるための一助となれば幸いです。

 

 

落とし穴1 ”繰り返し”ってそもそも退屈

  ボードゲームはターンやラウンドの繰り返しでできている。ここにもう初めて作るゲームが面白くない原因の一つが眠っている。人間、同じことを何度もやると飽きてしまう。

 

ではどうするか?

考えるべきポイントは大きく以下の2つがあると思う。

 

①尺を考える

  ゲームにおいて短い時間でプレイできることは武器である。狙った面白ささえ表現できているのなら、変に欲張らず短くした方が良い。

 

 また、決着がついたとプレーヤーが感じるころにはゲームは終わり時である。そのタイミングがいつになるかはルールが”現状の勝者”と”現状の敗者”、どちらに味方をしているかに影響を受ける。

 例えば拡大再生産は勝者に対する追い風なので、適切なラウンド数は短くなりがちである。長時間ゲームにも拡大再生産要素の濃いものはあるが、ラウンドは短くなっていたり、あるいは勝利点がぼかされていて誰が勝っているか見えにくくなっている。

 

 

②飽きないように毎回変える

 最も単純な方法はイベントカードや新しいアクションの解禁であるが、それ以外にも目立たないよくある方法は多数存在する。

 

例1

 簡単な競りゲームを作るとしよう。毎回競りにかけられる商品がずっと同じではゲームは完全な繰り返しだ。『5金くらいかな?』 と1回結論が出たら ずっと5金というだけ、これでは簡単ではなく退屈である。

 だからといって全部ユニークにすると把握が大変だ。

このようなケースの場合、最もよくある方法はセットを作る事だ。単純に2種類のものをセットで販売してもよいし、順位に応じて渡すものを変えてもよい。

 

例2

よくある木や石といった資源を採った後、建物を建てるゲームを作るとしよう。

資源の獲得数と必要数が同じだったら一体何が起こるだろうか?

 

状態A⇒①資源を採る、⇒②建物を建てる⇒状態B

という流れになったとしよう。

状態AとBでは建物1個を除き同じ状態になってしまっている。何回繰り返しても建物が一個増えてそれ以外何も変わらない。

 

では倍数ではない数ならどうなるか?当然、資源の残り個数が変わっていく。

残り木1本が足りない時、『木3本』と『資源何か一個とスタピー』はどちらが良いのだろう?とか

今回は建築の前にもう一度、資源を採ればよりいい建物が建つなぁ。どうしようか?

といった状況を引き起こす。

 

だから、資源の獲得数や必要数は素数や2の乗数が多く使われる。3,4,5あたりが特に。最大公約数が1になる小さな数を選んでいるのだろう。

 

 

落とし穴2 ”情報の整理ができていない”

   4年前の記事にも書いたが脳は5~9本の手を持っている。もちろん実際に手が生えているわけではなく、脳が最も活発な世代でも5~9個の塊を処理するのが限界である。という意味である。そして、人間は扱える塊の数が増えるのではなく、塊の大きさが大きくなる形で成長する。例えば英語だと、初学者は一個の単語や習いたての文法を理解するのに手を1本使ってしまうが、慣れてくるにつれてより大きい範囲を一個の手で把握できるようになる。

 

 ゲームに慣れていない人に合わせるのなら、当然、小さな手でも持ちやすくすることが重要だ。例外処理の多いルールや不必要なパラメータ、直感的でない処理、聞いたことのない専門用語はゲームを非常に持ちにくくする。

 また、順を追って教えていくという方法もある。アクションを一個ずつ解禁したり、最初の1ラウンドや中間決算までの価値を低く設定し、慣れてもらったりする。

 

 ゲームに慣れた人とゲームに慣れていない人を一緒に遊ばせたいのなら、慣れていないプレーヤーの思考の外を利用する。ゲーム慣れしているプレーヤーほど

 

①1動作で2個以上のパラメータをいじった時、両方意識できる傾向にある

②より、長期/中期的な展開を考える傾向がある

③より多くの隠されたコンボや相性を見抜く傾向がある

 

という傾向にあると思われる。

 

 例えば、有名どころでドミニオンの最初のゲームを見てみよう。、10個枚のサプライと、勝利点、お金のカードがある。購入する1枚を何にするかは(買える範囲で最大の価値を持つ)勝利点とお金を加えた、12択の選択肢を持っている。

 このゲームを『長期的な最適手をうつ』というスタンスでプレイした場合、手1本につき1選択肢では足りていない。コンボや相性まで把握すればなおさらである。12の選択肢やその関係性を整理することがまず求められる。

 『成り行きで考える』というスタンスでかつ『せっかくだから買える中で最も高い奴から選ぶ』という思考で行った場合、5択以内に収まっているので難易度はぐっと低くなっている。

 

 ナヴェガドールのロンデルは短期的に見れば3択を基準にはしているが、次ラウンド以降の都合も考えさせるシステムである。(話はずっと前の項目に戻るがロンデル”8”マスと”3”マスまで進めるは最大公約数1である。『最速で恩恵取るしかない!』 と決め打ちしてもどこで2マス移動をどこでするか?という考えどころは残る。9マスだとこうはいかない)

 

 こういった特定の思考をするプレーヤーの考える量を増やすルールはボードゲームのあらゆるところに組み込まれている。探してみてはどうだろうか?

 

さいごに

 最初は気を使いながら恐々と書いていたのですが、結構スムーズに書き進めていつの間にやら午前4時。他にも色々思いつくのですが、今日のところはこのあたりで。つまらない原因と向き合う、ネガティブな印象の話題でしたが、『あの時こういう事考えて改善してたなぁ』と昔を思い出しながら書く事ができました。 至らぬ文章ではありますが、何かしらゲーム作りの参考にでもなるところがあれば幸いです。 

 

 明日は23日目。”締切に締めころされる話”だそうです。