ビブリオゲームズBlog

自作ボードゲームや遊んだボードゲームのことを書いていきます

ゲームを『ルールの足りない未完成品』にしないために意識する3つのコト

 初めまして、Biblio Games 古瀬 和人と申します。 この記事はBoard Game Design Advent Calendar 2017 21日目の記事となります。

 

はじめに

 シンプルなボードゲームは入れられるルールの量がそもそも少ない。何の考えもなく作ってしまってはルールの足りない未完成品になってします。(このあたりは去年のアドベントカレンダー するめデイズさんの記事「ルールの量」と「面白さ」の関係について を参照。)でもシンプルだけど奥が深いゲームを作りたい。そんな場合はどうすればいいか? 今回の記事ではそんなことを考えてみた。

 

 

1.ルールに複数の役割を持たせる

  引用する事に恐れ多さを感じるのだが、宮本茂さんの有名な言葉に、『アイデアというのは 複数の問題を一気に解決するものである』というものがある。理屈上、一つのルール(アイデア)に複数の仕事をさせてやれば、ルールを減らしても十分に機能させることは可能である。

 これは理想論であるが、以下の3つのコツを意識する事でそれに近づくことは可能である。

 

  ①ゲームの核の部分に複数の役割(狙い)を持たせる事 

  ②アイデアを思いつくのではなく、思いついたものがアイデアか確認する事 

  ③”全部”ではなく”複数”であることを忘れない事。 

 

 例えば、去年の記事の第2段落 課題を設定しようで BAG-GAIの核であるアイデアを採用した3つの理由を書いたが、これも3つの条件からアイディアを導き出したのではない。もちろん適当に思いついたものではないが、各条件から発想を広げていき、思いついた全ルールの長所を評価した結果、その新鮮さも含めてそのプレイ間を気に入り、(同時にじゃじゃ馬さに不安は感じながらも)ゲームの核として採用したのだ。

 

 また、一個でも多くの項目に興味を持つ事が ③”全部”ではなく”複数”であることを忘れない事。 のコツである。3つチェックポイントを知っていてそれをすべてクリアするより、10個知っていて半分クリアする方が良いゲームができる。(もちろん優先順位というものがあるのでそこまで単純ではないが)

 

 ゲームデザイナーの仕事に左右されるゲームの項目は想像以上に多い。視認性や見た目といったグラフィック担当者の担当領域ですらゲームデザイナーが意識しているかどうかで差は出てくる。僕の過去作の場合だと、『カードに書くパラメータやテキストはどれくらいなら難しく見えないか?』、『カードが重なってイラストが見えない”手札”より全員がいつでも見れる”場”にグラフィックの勝負所を持って来よう』といった事を考えていたりする。

 

 テストプレイ後の改良についても基本は同じである。現在、採用している各ルールがどんな役割を担っているか、どんな弱点があるか把握しながら組み替えていく。

 

 ただ、ルールを一か所いじると多くの場所に影響が出るのでそれを把握する必要がある。テストプレイして確かめる以前に、フィードバック(ルールが勝っている人に味方するか負けている人に味方するか) や フローステップ(感情が動くまでにやらなければならない選択及び動作の数)が増えすぎていないかぐらいは頭の中で考えておくと開発が少しはスムーズに進むように思う。

 

 シンプルなゲームを目指さないにしても 自分の採用した各ルールにどういう意味があるか考えることはゲーム改良の第一歩である。考える習慣がつけば、少なくとも ”解決策によって生じた新たな問題”について考えてしまったり、”簡単になるように”といった理由で元々の良さを消してしまう事は避けることができる。

 

2.新しさは最良のものを一つだけ入れる。

 自称シンプルなゲームには”既視感”を感じるものが多い。ゲームを成立させること自体に精いっぱいで”差別化”や”個性”をつけるためのルールが足りていないからだ。シンプルなルールの場合、個性や新鮮さといったものを後から付け足すことは難しいので核となるアイディアがどれだけ個性的か?そしてそれをどれだけうまく提示できるかが重要になってくる。

 

 僕の場合、新鮮さを印象付けたい部分以外はむしろ普通なルールを採用するように注意している。今までにないルールは、同じ複雑さの既にプレイしたことのあるルールに比べてゲームを把握しずらいという弱点がある。そして、非常に都合の悪いことに”新しい”や”シンプル”という誉め言葉はそのルールがもたらす面白さを十分に堪能できた人の口からしか出ないのだ。 

 

 初回から楽しめる事がシンプルなゲーム最大のアドバンテージである。それを守れないなら素直に1段階難しいものにした方が良いだろう。

 

3.メリハリを意識する

  初回から面白いことはシンプルなゲームの最大の長所である。しかし、それは”飽きやすさ”、という短所と紙一重でもある。

 これを回避するための一つの方法は、ゲーム内の各ラウンドで意図的に違う印象を持たせる事である。メリハリを持った5ラウンドで構成されるゲームを3回するのと 似たような状況を15ラウンドさせられるのでは、大きく意味が変わってくる。

 

 また、そもそも論として、入っている面白さにあった尺で終わることも重要である。

 

 ・序盤が常に同じなら序盤が終わった状態からゲームを開始できないか?

 ・意味のある思考のなかったターンがないか

    (使えるカードがないのでドローして終了等)

 

 といったことを考え、面白い部分を増やすことも有効である。公平性や運による揺らぎを意識してなのか”人数分のラウンド”をさせようとするル人をたまに見るが1ゲーム5分以内で、リプレイ性に自信のある場合を除きやめておいた方が無難であると思う。

 

さいごに

 ボドゲカフェでカタンがリクエストされ、初体験の大学生がなんだかんだプレイしている。そんな状態をちらほらと目にする今の日本において、ルールの足りない簡単なだけのゲームの価値は落ちていく一方だろう。

 簡単なだけではいけない。この状況下で、”シンプルで面白い”、”シンプルだけど奥深い”といった着地点を目指す事は難しい。しかしそれでも、”最も面白い部分をストレートに楽しませることができる”という意味で挑戦する価値があると考えています。

 

 至らぬ文章ではありますが、何かしらゲーム作りの参考にでもなるところがあれば幸いです。 

 

明日は22日目 円卓Pの記事ドミニオン発売10周年を前にデッキ構築の歴史を辿る・前編です。